今日、日本企業におけるIT投資の課題は、投資額の多寡ではなく、IT投資を経営戦略と結び付けて説明・判断できていない点にあります。本来IT投資は、成長戦略を実現するための経営資源であるべきですが、個別案件の積み上げや一律の予算管理にとどまり、価値や成果が十分に可視化されていないといった状況が散見されます。
その結果、ITはコストとして捉えられ、不要な投資を見送る判断も難しくなっています。ITを企業価値の向上につなげるためにも、IT投資を戦略実行の手段として再定義し、可視化と意思決定の仕組みを整えることが求められます。
KPMGでは、その課題解決の1つの手段として、TBM(Technology Business Management)を活用したIT投資管理の高度化に向けたサービスを提供しています。
日本企業が抱えるIT投資に関する課題例
- IT投資に係る成果を十分に評価できていないため、社内でIT部門の価値を説明できない。
- 経営企画から「予算を何%削減」と求められるなど、IT投資ポートフォリオの重要度を踏まえたメリハリのない判断が発生する。
- 維持費に関して、その重要性や取捨選択をできる情報が整理できず、無駄な予算が発生している可能性がある。
- 経営やビジネス部門が利用しているシステムの維持費に関して、ロジカルにその内容を説明できず理解を得られない。
- ITが創出している価値がビジネス部門に理解されず、IT部門がコストセンターとして見られている。
TBMとは
TBM(Technology Business Management)は、単なる「ITコスト管理」ではなく、ITコストを経営の視点で可視化し、価値に基づく意思決定を可能にすることを目的とした「テクノロジーの価値フレームワーク」です。
その考え方はTBM Frameworkとして定義されています。これは4つの構成要素、Organization Value Drivers、TBM Outcomes、TBM Model(TBM Taxonomy)、Foundationsによりテクノロジーの価値を計画、測定、管理するための基盤を提供しています。
【TBMフレームワーク】
Organization Value Drivers | TBMが影響を与えるビジネス成果を定義する組織の価値要素。これらにより、TBMは企業価値を戦略的に実現する。 |
TBM Outcomes | 組織が達成すべき成果を定義。これはTBMによりテクノロジー管理を測定可能なビジネス成果へと転換する仕組みが反映されたものとなる。 |
TBM Model(TBM Taxonomy) | 生データを、テクノロジー、財務、およびビジネス上の意思決定に情報を提供する実用的な洞察に変換するための中心的なメカニズム。TBMモデルを適用することで、組織はテクノロジーの総コストと価値を分析し、トレードオフを評価し、ビジネス目標に合わせて支出を最適化することが可能となる(TBM Taxonomyは技術、財務、およびビジネス要素を分類および整理するためのグローバル標準)。 |
Foundations | TBMプラクティスを確立および維持するために必要なコアコンポーネントを定義。5つの領域により、組織はTBMモデルを構築、運用、成熟させるための適切なリソースと機能を備える。 |
TBMを導入することで、ITコストを事業・サービス・戦略と結び付けて整理でき、ITがどの領域でどの価値を生み出しているのかを明確に説明できるようになります。その結果、成長に資する投資への重点配分や、効果の低い投資の見直しが可能となり、ITを単なるコストから企業価値創出のための経営資源へと転換するといった効果を望めます。
IT投資管理の目指す姿
KPMGのIT投資管理の目指す姿は、「そのITがどの事業に、どの価値を、どれだけ生み出しているのか」を、経営・財務・事業と共通言語で語れる状態をつくることにあります。
具体的には、ITコスト・利用・成果を可視化し、勘や経験ではなくデータに基づいて投資・継続・撤退の判断を行い、限られたITリソースを事業価値の高い領域へ再配分し続けるといった一連の意思決定が継続的に回る仕組みを構築することを本質としています。
これらが定着した状態では、IT投資の妥当性を経営に説明でき、事業戦略とIT投資の整合性を担保し、コスト最適化と価値創出を両立させることが可能です。
【KPMGの目指すIT投資管理の姿】
IT投資管理高度化に向けたアプローチ
IT投資管理高度化の基本的なアプローチは下図における「1.ITコストの可視化」から「2.IT予算・投資管理高度化」といった順を追った流れとなりますが、多くの企業では、「1.ITコスト可視化」の段階においてデータが十分に整備されていないことなどを理由に、取組みに踏み出せていない状況が見受けられます。
KPMGでは、TBMを活用し、テクノロジー価値とビジネス価値の接続に基づく効果的な管理ポイントを起点として、現時点で整備されているデータを活用した構造化・高度化・適正化を推進しています。そのうえで、不足しているデータを段階的に補完しながら、アジャイルに成熟度を高めていくアプローチを採用しています。
これにより、初期投資を抑えつつクイックウィンを積み重ね、組織内のITの価値向上を図るとともに、経営・ビジネス部門・財務部門に対するIT投資およびコストへの理解を無理なく醸成することが可能となります。
【IT投資管理高度化アプローチ】
1 | ITコストの可視化 | ITコスト構造を可視化することで、ITコストの適正化機会を整理します。 |
2 | IT予算・投資管理高度化 | ITコスト構造や投資・コスト管理プロセスにおける課題抽出や対応方針を策定し、必要データやプロセスの実装を行います。 |
3 | ITコスト適正化 | ITコストの可視化、管理の高度化により、ITコストに関する無駄を発見し改善します。 |
4 | IT投資・予算管理システム化 | IT投資・コストデータの分類、配賦などのロジックを実装し、再現性を担保するためにシステム化を行います。 |